「5つの自分で」の中で、この「自分で丸つけ」は特に重要です。
なぜなら、子どもが「自分で丸つけ」をしていくようになると、自分で「わかっていること」と「わかっていないこと」をしっかり仕分ける「センサー」を身につけることができるからです。
私たちはこれを「仕分けセンサー」と呼んでいます。
この「仕分けセンサー」を身につけることができると、子どもの学力はみるみる向上し、自然に「できる子」になっていきます。
ですから、当算数クラブでは、就学前のお子さんから自分で丸つけをするように指導しております。就学前から、日々の学習の中で、自分が「わかっていること」、「わかっていないこと」を仕分ける作業をさせていくのです。
最初は、私たちが理想とするような「丸つけ」ができないことがあっても、毎日継続していくことで、就学前のお子さんでも、「わかっていること」、「わかっていないこと」を必ず仕分けられるようになってきます。
これは、当算数クラブの教育実践からも明らかな事実です。
しかし、世間の多くの方々は、あまり子どもに「丸つけ」をさせようとしません。
なぜなら、「解答書」を見て答えを丸写しするのではないかという不安や、「わかっていないこと」をそのままにするのではないかという心配があるからです。
これでは、子どもはいつまでたっても「できる子」になるために必要な「仕分けセンサー」を身に付けることができません。
私どもは、子どもが「解答書」を見て答えを丸写ししたときや、「わかっていないこと」をそのままにしたときこそ、「5つの自分で」の「しつけ」をする絶好の機会だと思っています。
丸つけは、自分がわかっていること、わかっていないことを仕分けする大切な作業です。
丸つけをするということは、自分がわかっていない問題や、ミスする傾向のある問題を、自分が理解できている問題と仕分けをするということになります。
本当の学習は、そういった自分がミスした問題を「わかった!できた!」という状態にすることです。わかってもいない問題の答えをそのまま書くというのでは、学習は成立していません。
これでは、『ただ答えを写している』だけで、『学習した』とは言えないのです。
ですから、もしお子さんが「覚えた答えをただ書いている」というような印象があったら、ミスした問題は、必ず「わかった!なるほど!」というところまで考え、納得できてから、答えを書くようにするということをアドバイスしてあげるのです。
このアドバイスを1回しただけで、すぐに子どもの丸つけの質が変わるということはありません。その後も、何度かアドバイスをしていく必要があるでしょう。
しかし、そこで短気にならないで、そのアドバイスを低学年うちから徹底していくのです。
そうすると子どもは、「わかっていない」のに答えを書くことに抵抗を感じるようになり、「わかっていない」状態から「わかった!」という状態になるまで考えるようになってくるのです。
このことをしっかり指導せず、子どもが中学年、高学年になったことをきっかけに、丸つけを任せようとすると、たいてい失敗します。なぜなら、前述した点をしっかり指導しなければ、丸つけ、やり直しがいい加減になることが増え、子どもは学習したつもりでも、学習成果がなかなかあがらなくなるからです。
子どもに丸つけを任せると、子どもが答えを写すなどの不正行為をするという話をよく耳にするのは、実は低学年時にしっかりとした学習面での「しつけ」がされていなかったという証でもあるのです。
私たちは一生子どもの丸つけを肩代わりすることはできません。
子どもは成長し、いつか必ず「自分で丸つけ」をする必要が出てきます。
そのときに子どもが困らないように、しっかり「自分で丸つけ」のしつけをしていくことが、子どもの学習をサポートする私たちに必要なことなのです。