それでは、具体的な数学の例を通して、考えてみたいと思います。
数学の勉強に「関数」というものがあります。
「y=ax+b」 という式です。
これは、直線を表す一般式ですね。
上の図を見ると、
「y=ax+b」という親の式があって、その親の式から、次々と子どもの式が生まれてきます。
この「親の式」の a と b に、いろいろな数を代入していけば、「子どもの式」は無限に生まれてきます。
親という“法則性”があって、その“法則性”に基づいていろいろな具体的な直線が無限に生まれてくるわけです。
つまり、私たち人間は、言語の“法則性(文法)”を理解することができる知識をすでに身につけて生まれてきたように、数学においても、「y=ax+b」という法則性を理解する知識をすでに身につけて生まれてきています。
ここで重要なことは、「y=-2x-5」や「y=3x+2」などの直線の式は、実際にグラフに書き表すことができます。
しかし、“法則性”としての、「y=ax+b」の直線を表す式は、グラフに書くことはできません。
「y=ax+b」という直線の式は、直線全体を代表する式ですから、具体的な直線としてグラフに書くことはできないのです。
このように、“法則性”とは、実際に存在していますが、具体的に「法則性とはこういうものだ」と表現できる性質のものではないということです。
つまり、“法則性”とは、実際に存在するものですが、私たち人間にとっては、抽象概念としてしか理解できない性質のものです。
しかし、私たち人間は、そのような性質を持った“法則性”を理解する能力を内在させて生まれてきているのです。
従って、“法則性”を理解する能力を持っているのですから、教育を通して“法則性”を教える必要はありません。
それでは、本当に「“法則性”について教える必要がない」のでしょうか?
この点について検証してみたいと思います。
ここでは、私たちが生まれながらにして“法則性”を理解する能力があるかどうかを実験を通して確認してみたいと思います。
どうですか?
自然に上の表Bの中に秘められている“法則性”をあなたは発見することができましたね。
それでは、今回のテーマとなっている数列に戻って考えてみたいと思います。
同じように、□に数や式を入れながら考えてみて下さい。
どうですか?
あなたは、人から教えてもらわなくても、必要なポイントについて自分の力で考えていくだけで、自然に“法則性”を見つけることができましたね。
このことは、あなたの中にすでに、“法則性”を理解する能力があることを物語っています。
あなたの中に、“法則性”を理解する能力が、すでに宿っているのですから、人から教えてもらう教育は必要がないということになります。